vol.07 小泉 進次郎 さん
小林武史が各界のゲストを招いてさまざまなテーマで語り合う対談連載。
今回のゲストは環境大臣の小泉進次郎さん。
KURKKU FIELDSへ視察に来られた際の特別対談をお届けします。
環境と経済は同軸で回る時代に突入した
小林:僕は、進次郎さんが環境大臣になって、最初はもちろん世間も僕も「意外だな、この組み合わせが」と思っていたけれど、結果ものすごく良かったと思ってるんですよ。
小泉:ありがとうございます。
でも環境大臣になって、自分が変わりましたよ。
小林:そんな感じがするんですよ、はたで見てても。でもそれは、そんな感じがする理由はなんですか?
小泉:やっぱり「知った」ことです。サステナブルなことが重視される世界や価値観に共感しています。環境大臣になって家族もできて、人生のイベントの様々な変化が次々にやってきました。自分の中でも変化のタイミングだったんでしょう。さらに世の中ではコロナによって大きな変化が起きました。じゃあこの後ってどうしよう、という時に、今、よりサステナブルな方向へ、一つ一つ世の中を変えていかなければいけないということを腹の底から思えるようになったんです。
小林:いや、それものすごいありがたい話として受け止めるし、これから小泉進次郎という人がどういう形で、いずれにしても政治家としてやっていかれるんだろうというのはわかる中で、凄く良いタイミングで「環境」というものに触れたんだっていう風に思います。いままで「環境」のことって、テーマが広すぎたり、バランスのことだったり。確かに世の中は経済、外交、国防とかもっとパンチの効いたようなものを図っていかなくちゃいけない、力比べしなくちゃいけないっていう感覚があると思うけど、でも実は普通に生きてる我々にとっては、去年の台風のように、水害や今年のこの長雨の後の猛暑のように、今の時代、環境の変化こそ身近なこととしてあって。しかももともと地震大国でもあるし、自然というものと身近に生きている、生きざるを得ない、そのことをわかってる国民だとも思うから。だけど出てこないんだよね、なかなか。政局も変わろうとしてる時でも。例えば進次郎さんがこういう地球の繋がりということを引っ張っていってもらえるんではないかと思っているのですが。
小泉:最近、国際社会では大きな地殻変動が起きています。例えば米中の対立もその一つですが、その中で経済と外交というのは今まで別々に語られていましたが、今は別々ではないんです。経済も外交も密接に絡んでいる。それは経済と外交だけではなくて、環境と経済も同じです。そんな話をしていたら、それどころじゃないぐらい美味しそうなピザが出てきました。もう早くこのピザについて解説を聞きたい(笑)。
小林:そのまま原稿に載せさせていただきます(笑)。
小泉:いやあ、今、環境と経済が同軸だと言ったところから、一気に僕の頭はこのピザにいってしまった。まず食べますね。(食べる)これは魅力的!このチーズはさっきのモッツァレッラですね。
(二人は対談直前に、生モッツァレッラチーズを食べています。小泉さんも美味しさにいたく感激していました。)
小林:モッツァレッラ。マルゲリータです。
小泉:この水牛のモッツァレッラを作ってる方、なんておっしゃいましたっけ?
小林:竹島。
小泉:竹島さんはこれだと喜ばないのかな。「なんでモッツァレッラに火をいれちゃうんだろう」と。うまいけどね。めちゃくちゃうまい。この生地も美味しい。
小林:美味しいでしょ。
小泉:はい。
—— 通常のピザ生地は1日の発酵だったりするんですが、うちのピザ生地は2日間寝かせているので、ゆっくりと発酵させて生地の香りを引き出しています。
小泉:ホント美味しい!
小林:こういう美味しさの中に、環境と経済の一致みたいなものはあるとは思うんですけどね。
小泉:この「環境と経済が同軸だ」という考え方は、安倍総理の2年前の発言にあります。私もよく引用するのですが、「もはや環境は経済のコストではない。競争力の源泉だ」と言われています。これはつまり、わかりやすくESGを語っています。今、ESG投資が伸びていて、環境・社会・ガバナンス、これらに重きを置いて経営をしている企業が価値を高め、お金が集まってくる。ESG投資はコロナ後に急激に伸びています。コロナ前からも伸びていましたが、その伸び方の角度が急になったんです。世の中の流れが、環境と経済を別々に捉えていたところから一つになってきた。これを更に加速させて、コロナの後の経済社会を変えていく。「リデザイン」、つまり経済社会を新しく再設計していく。その中で再生可能エネルギーをどうやって増やしていけるか、これがものすごく大事です。「再エネ=高い」と思ってる人が多いので、「再エネは高くない」という実例をたくさん作っていこうと考えています。因みに、環境省が管理する新宿御苑は再エネ100%にしたんですよ。
小林:あ、そうですか。
小泉:100%にしたけど電力単価が全く変わらなかった。だから再エネにしても高くなっていないんです。こういう実例を世の中に見せて行きたい。クルックフィールズでの再エネ率は80%ぐらいって言ってましたよね?
小林:そうです。導入してから。
—— 工事して導入すると8割ぐらいここの電力を、っていう。
小林:自給できる。
小泉:その80%を100%にしたいですね。
小林:そうですね。そのためには太陽光だけじゃなくて、もうちょっとカバーできる他の再エネを入れていくべきなのね。どうしても曇りの日が続くとなると、それを全部オフグリッドにするためには、ものすごい数の蓄電池が必要になるんですよ、やっぱり。それはさすがに効率がよくないってことなので、バイオマスなどでできないかって思ってますけどね。堆肥ってことでもそうだけれど、食品残渣のことでも色々、何度もトライアルがあったけれど、また技術が進んできているという話しもあるので。
小泉:環境省が持っている情報や知見をクルックフィールズでも活かしてもらいたいですね。
—— ここアップダウンが色々あるんで、小水力がいけると思います。
小泉:ああ、小水力、確かにいけそう。いいですね、早速アイデアが生まれましたね。
小林:ねえ、なるほど。
—— 水を循環させているというお話で、循環させる時に高いところから低いところに、水をきれいにするっていう水質の面もありますから。ここはせっかく水の流れというのがあるので、それをうまく使うというのは、多分検討すれば考えられます。
小泉:いけますね。
「リデザイン」と「利他のセンス」
小林:ねえねえ、これって何の肉?
—— 色の薄い方が新玉ねぎのソーセージで、濃い方がイノシシの粗挽きソーセージになります。
小泉:イノシシ?
小林:近くに解体処理施設を木更津市と一緒に作ったんですよ。獣害と言われてる、本当にみんな困ってるんだけど、それをただ殺処分にして終わらせないで、こうやって商品にするっていうプロジェクトなんですよね。で、イノシシ美味しいんですよ。
小泉:このソーセージ美味しいですよ。しかも地元のイノシシですね。
小林:そうなんです。
小泉:この薄い方の、玉ねぎと豚肉ですか。これも新鮮なソーセージですね。
うん、爽やかで美味い。小林さんは、クルックフィールズができて、今、どんな気持ちですか?
小林:まあでも来週、クルックフィールズハーベストというのを、
小泉:収穫祭ですね。
小林:そうですね。ま、と言いながら、ここで生まれるいろんな収穫、その中に僕が発想するような、もしくは他のアーティスト、ミュージシャンが発想するような音楽とか、例えばアートのパフォーマンスなんかでも、ここの中に入れ込む。例えば、音楽イベントとして2,000人とか呼ぶような日もあっていいけど、チケット代もタダで、「今日のクルックフィールズハーベスト無料です」って行ったら、なんか音楽が鳴ってるんですよ。名前を知ってるようなミュージシャンじゃないかもしれないけど。それが響いて来て、「なんかいいなあ」と思える、そういう「出会う」ということが。何か目的を持ってそこに行く、誰々が出るからそれを観にいくっていうことだけじゃない響き方っていうのが、僕はあると思うんですよね。
少し音楽の話に偏ったけど実際ここは、自然の中のいろんなものが、それこそ微生物から太陽光の循環とともにいろんな化学反応や「出会う」ことが起きてるんですけれども、それを月に一回ぐらいはみんなで表現する場にして、クリエイティビティをちょっとあげて、トライアルする気持ちを持ってやっていく。あとスタッフもそれぞれの部門でやっているみたいな感じにもなるから、それができるだけ一つに集まってできるっていうことがあって。それが日常の営みの中に組み込まれてるみたいな感じがいいなとは思ってるんですけどね。
小泉:来た人と一緒に何かを作ったり、
小林:それも凄く大事なんです。
小泉:一緒に参加できたりするものがあればいいなって思いますよね。あの池に来た人が、池の浄化に繋がるボールか、タブレットみたいなものを投げる。次に来た時には池の水がきれいになっているのを楽しむとか。もしくは滑り台を作るところがあったじゃないですか。ああいうところや、これからここに図書館ができるなら、来た人が石を一個積むことで、完成する様子を一緒に楽しむ。こんな関わり方ができたら素敵ですよね。
小林:そう、なんかやっぱり経験というか体験。料理もすごい腕を持ったシェフが参加してるんだけど、みんなで一緒に作れるような食堂を作ろうっていう話もあるんですよ。台所。来る人が、グループで来ればそれはもちろん楽しいけど、知らない人とそこで関わるってことも経験になるような。でもその中に、価値観をちょっと共有できるようなものがあれば、それは未来に対しての思いとか、子どもさんがいらっしゃるような方たちも、みんなやっぱりなにがしかの思いを持っているから。ここに来て何か未来に受け継いでいくもの、もしくは僕らが生かされているものみたいなものを感じてシェアしたり助け合ったりとか、知り合ったりしながら、記憶に残るもの、なんかそういうのをやりたいですね。
小泉:いいですね。また次回来るのが楽しみだな。
小林:また、いいアイデア出してくれるような外の人がいっぱいいて。僕は音楽プロデューサーだから、特に僕の音楽って、譜面で書く音楽もあるけど、ミュージシャンが集まってくれてその人の身体を通したようなアイデアっていうかクリエイティブで変容していくんです。ここはなんかそういう意味でのセッションがずっと行われている感じなんですよね。
小泉:小林さんは「リデザイン」という言葉を聞いて、どんな風に感じますか?
小林:リデザイン?
小泉:スッと入ります?
小林:そうですね。
小泉:あんまり今まで聞いたことがない。特に政治や行政の側から使われる言葉ではないですよね。
小林:まあそうですね、確かに。
小泉:デザインの世界では使う言葉かもしれないけど。この「リデザイン」というのは、コロナの後の経済社会の形を変えていく、経済社会をまさに再設計するということで、こういう考え方を広めていきたいと思っています。この前、96カ国が参加する気候変動に関する国際会議で議長をやったんですが、その時に「リデザイン」っていう言葉を発信したところ、海外からもすごく反応が良かった。ヨーロッパは「グリーンリカバリー」という言葉、日本は「リデザイン」っていう言葉を使っていますが、描いている未来は共通していると思います。
小林:なるほど。
小泉:小林さんは「利他」ですよね?
小林:そうですね。いろんなイメージがありますけど。
自由競争の中でずっとボリュームを上げていくと利己が暴発してくる、ただの弱肉強食で「自由競争なんです、以上」って言ったら、僕はサステナブルには到達しないと思うんですね。
時間をお金に変えるってことのサイクルだけではない、「違う命との出会い方」をして行かないとサステナブルにはならないと思います。それは豊かさだし楽しいことだと思うのでね。
だから、ものを作ることでもそうだけど、自分の目から見るっていうのもそうだけど、想像力の中で地球とか、全体から「個」を見てみるみたいなことが必要だと思う。それと、それぞれの利己を合理的に追求していくとやっぱり全体の利他っていう考え方にどっかで繋がってくるんじゃないかという思いはありますね。
あと震災から十年になろうとしてるけど、あの時利他の気持ちがすごく日本の中に蘇ったように僕は感じてたんだけど。その十年後に、コロナになっていて。「利己」と「利他」はつながって感じられますよね、だから必要なのは「利他のセンス」って感じですかね。僕の中にも利己的なところはあるし、「利己的なことをやめよう」じゃなくて、その繋がってる感覚が大事。
小泉:コインの裏表ですね。
小林:そうそう。音楽もすごくそういうところがあるから。そこに向かってこれから数年間やっていきたいなっていうのはあります。
でもここなんかは、わかりやすく言えば「リデザイン」なのかもしれないですけどね。さっきも言ったけど、戦後の高度経済成長を支えて来た、残土受け入れとかも、東京からぐるっと房総半島回って、ここならいいだろうって言ってゴミを置く掃き出し口みたいになってたんだと思うんだけど。縁があって、そこをもう一回、土から再生させようとしてデザインしなおしてるんですよね。
小泉:そういうことですね。ここが残土の受け入れ置き場だったわけですよね。考えられないですね。
小林:でもまだ何にもない時の写真、いくらかあるよね(スタッフに聞く)。あとは掘り返したガラとか、大きいものはとってあるから。いつか現代アートの作家に作品にしてもらいたいと思っています。こんなのが出てきたんだ、みたいなやつがあるんで。そういうビフォーアフターみたいなことはいずれちゃんとした形で表現してみたいけどね。
ディストピアではない、共生していく社会
小泉:本当にここはリデザインの世界を実現している場所です。
今コロナの中、音楽活動はどうされているんですか?
小林:コロナ禍になってすぐに、音楽はそもそも3密と仲がいいって言ってたんですけど、近年ちょっと高密度になりすぎていたんじゃないかっていう思いもあるんですよ。密度を上げて、より刺激的な音楽、密閉して大音量とか。お目当てのアーティストに高密度で繋がってるというファンビジネスとかも含めてかな。「もう少し自然な感じがいいよね」という傾向もちょっと密度のゆるい小規模なフェスなどに出てたのかもしれないし。未来への思いとか人との繋がりの大切さっていうようなこととか、自然との距離とか。みんな気持ちいいと思ってくれる要素ってあると思うんですけどね。
小泉:なるほど。
小林:進次郎さんは、この先、未来の日本のイメージをどういう風に、例えば日本人は依存体質のように思えるんですけど、だけど僕は、自然界に対しての依存っていうものが奥にあるんじゃないかと思って、あながち日本人のグレーな感覚みたいなものっていうのも悪いものだけだとは思ってないんですけど。そういうことも含めてどういう世界、国際社会の中での日本みたいなイメージを持たれてるんですか?
小泉:生物多様性の専門家でもある五箇先生という面白い先生がいるんです。その先生が言っているのは「地産地消が大事だ」ということです。だけど別に地産地消って農業の地産地消ってことだけではなくて、例えばエネルギーもそうだし、より大きな概念で地域の中で循環する経済社会を作ること。顔の見えるコミュニティーを生み、ひいてはそれがその地域に対する思いだったり愛情だったりして、郷土愛が生まれる。郷土愛を育んでいくと、里山とか自然とか、自分たちの地域を作っている自然を守ろうとか、こういう思いに繋がる。これが結果としてどういう社会になるかというと、私がさきほど言った「脱炭素」「循環経済」そして「分散型の社会」という未来になる。日本を閉じた国ではなくて開かれた強い自立国家にしたい。そのためにも日本の中で私たちが変わらなきゃいけないことはいっぱいある。ただ間違いないのは、環境は日本の強みが発揮できる分野です。去年一年間環境大臣として外交の最前線に立ち、日本は、世界でもっとリーダーシップを発揮できると思いました。だから私はそんなに悲観はしていません。
小林:これから、世界が長いこと「奪い合う」ってことが起こってきた世界だと僕は思うけれど、これからの未来の中でそういうことが減って共生していく、世界でシェアしていく未来っていうのは、国境をまたいで起こる環境問題、気候変動を反作用として使ってね、共生していく社会を作っていくことってできると思います?
小泉:はい。できると思っていなかったら政治家はやってないです(笑)。
小林:そうですか(笑)。
小泉:小林さんは音楽の世界で、利他の精神を広げていきたいと思っている。
小林:僕の知り合いに、話が面白くて感度の高い有名なトランスジェンダーの人がいて、「私は正直言って今のままだとディストピアになってしまうと思うわよ」とか言うんです。でもね、その人も例えば農業のことを変えていかなくちゃならないっていって、何かできないかなって言い出している。感性の感度の高い人や環境に意識のあるような人は動き出そうとしているなと思います。今回コロナのことで本当に見識があるような人は2040年あたりに本当にそう言う分岐がくるのではないかと言ったりもしている。僕は、人間がここまで来てディストピアに無策のまま向かうとは思えないんですよ。ここまでダメになったとかいろいろ言うけれど、これも進化の過程だとも思えるんですよ。辿らなければならない道というか、いろんなことが。だから僕は希望持ってるし、乗り越えていけると思ってます。
小泉:多分ディストピアという悲観的な現象、出来事は確かに増えていると思います。世界も米中の対立を含めて、分断がいろんなところで見えるようになっています。これは国内も海外も両方ある。ディストピアのような出来事が起きれば起きるほど、私はディストピアとは逆の希望を見つけようとします。そこには政治ができることは絶対にあって、その一つ一つをちゃんと解決していった先は、ディストピアに向かっていると思っている人が想像するほど、暗いものじゃない、そんな未来があると常に思っています。
昨日、北アルプスの山小屋のみなさんと会ったんですが、「山小屋組合」というのがあります。環境省は全国34の国立公園を管理していて、その国立公園の一つが北アルプスの地域、そこにはなんと山小屋が100軒ぐらいあるんです。だけどコロナによって登山をする人も減って、山小屋も3密を回避しなきゃいけないから利用効率が落ちますよね。そのことによって経済的に大打撃を受けた。このままだったら山小屋がなくなっていく、ということは登山の文化がなくなることだという話で、じゃあここで日頃、国立公園の維持や運営でお世話になっている山小屋の皆さんに、環境省は一体何ができるだろうかと考えました。救護のために使う絆創膏や医療グッズ、食料を届ける時に、今までだったらヘリで運搬していたけどヘリもコストがかかって前ほど運行ができない。それじゃあ、と言った時にドローンという一つのアイデアが出てくるわけです。それで環境省の事務方と話をしていて「これってドローンが使えるんじゃないか?」。横須賀で無人島の猿島に、スーパーで買ったバーベキュー用品を無人島までドローンで届けるサービスがあるという話をしました。山小屋の人に会ったら、なんと、その横須賀の実証を見ていて、山小屋でのドローンでの物資運搬を実証で始めるというんですね。実はもう繋がってたんです。
小林:なるほど。
小泉:ほら、できる方法があるじゃないかと。まだまだ出せる知恵はあるなと思いました。そもそも登山をしている皆さんには絶対に山小屋が必要なので、例えば山小屋応援団みたいな応援団を作って民間企業の協力を募ったりする方法もあるでしょう。行政の力や知恵だけではできないことはいっぱいあります。国が介入を強めて、もっと税金を出して、我々が守りますではなくて、我々も気づかなかった「もっとやれること」ができる外からのプレーヤーを巻き込むことは私たちにもできる。そういう様々な知恵があるプレーヤーが参加する形で、民間だけでも、公だけでもできない領域を支えていくという役割を、環境省は果たせると思うんです。行政の情報収集能力も限界はある。だから小林さんが持っているクリエイティビティとか自由な発想みたいなものが、行政サイドにどんどん入っていくことは環境省にとってすごくありがたい。もっとできることがあるはずなのにできないと思いこんだり、救える人がいるはずなのに救えないと思いこんで、その人たちに何もできなくなって、結果的に大切な文化とか営みが失われていくことを解決したい。民間の世界と行政に大きな川が流れていて、「できない」じゃなくて「できるのに気づいていない」っていう時に、ここに橋を掛けられるんだよ、ということがたくさんあるんじゃないか。そういうことをすごく感じます。
小林:ものすごい共感しますね、それは。本当に。
小泉:だから進まない理由で「我々、予算がなくて」と言うと「いや予算の問題じゃないんだ。これ、気づきがあるかどうかだけなんだよ」といつも感じています。
小林:でも今日たまたま偶然、進次郎さんの友達がね、僕にとっての友達でもあるけど、ここに来てて、家族で泊まっていくんだけど。共通の友人は企業の社長ですが、東北の震災がなかったら仲良くなっていなかったと思う。そういうネガティブというか、大変なことがあるからこそ出会えるっていうのは本当に面白い。これが命の原理だなって思うぐらい。そして大変な時だからこそ多くの出会いがあって、いろんな人がいて、それぞれがが持っている役割や能力に応じての未来に対してのビジョンやアイデアを交換していける、これは結構喜びですよね。
小泉:私は単純に、人が喜ぶ姿見るのって嬉しいです。
小林:そうですね。
小泉:力になれることがあって、それを喜んでくれたら、こんなに嬉しいことはないし。自分に子どもができて、子どもができたことで自分の親や家族がめちゃくちゃ喜んでいる姿を見るわけです。そこには初めて見る顔があって、なんか改めて人が喜んでいる姿を見るのって良いなって思います。先ほどの山小屋の皆さんの訴えに、ドローンはどうかとなった時に「実は小泉さんの地元のドローンの事例を見て我々も今やっているんです」と言われました。実は行政でももっとドローンを使って、今までできなかった物資の運搬を人に頼らず、活用できる道があるのかもしれないと思うと、まだまだ自分たちにはできることがあったんだと希望が生まれるんですよね。もちろんお話を聞いても何ができるか浮かばない時もあるんですけど、何かができそうな気がすると希望が持てた時の喜びは政治家冥利につきます。
小林:喜びは、本当に大きなキーだと思いますね。それを増やしていくっていう思いは。
小泉:本当に。
小林:はい、頑張りましょう。
小泉:頑張りましょう。いい時間だったなあ。
対談を終えて
この対談は、進次郎さんが安倍政権下の環境大臣としての、ほぼ最後の公務?でクルックフィールズにいらした折に行ったものです。ダイニングで軽い食事をしながらでしたが、リラックスしてカジュアルな雰囲気で話せて楽しかったです。
進次郎さんとは震災後福島でお会いしたのが始まりですが、とにかく言葉の組み立て方、進め方、その正確さにいつも感心させられます。
政治家なんですね。
後日、新しい組閣においても環境大臣になられました。
個人的にとても良かった、と思っています。
「リデザイン」ぜひ進めていきましょう。
小林 武史
PROFILE小泉 進次郎
環境大臣 兼 内閣府特命担当大臣(原子力防災)、衆議院議員(4期)。1981年4月14日、横須賀市生まれ。関東学院大学卒業後、米国コロンビア大学にて政治学修士号を取得。米国戦略国際問題研究所(CSIS)研究員を経て、2009年より衆議院議員を務める。2011年、自民党青年局長に就任。2013年に内閣府大臣政務官 兼 復興大臣政務官に就任し、東日本大震災からの復興に全力を尽くす。2015年、自民党農林部会長として農政改革に取り組む。2018年10月、自民党厚生労働部会長として人生100年時代に向けた新たな社会保障の実現に取り組む。2019年9月、環境大臣 兼 内閣府特命担当大臣(原子力防災)に就任。2020年9月、環境大臣 兼 内閣府特命担当大臣(原子力防災)に再任。